体育にはろくな思い出が無い。
私は走る事がそんなに苦手でないくらいで、それ以外の運動能力に乏しい。
球技なんててんで駄目だ。
クロールはなんとか出来るけれど「平泳ぎが出来ない」という理由で夏休みに補習になったこともあるし、バレーボールのパスのテストで、「球がネットを超える程上がらない」という理由で0点を取った事もある。
集団で協力するのも苦手だ。
基本体育は走る他は嫌だった。
ま、その陸上も部活にしたら人間関係が苦痛で3ヶ月で辞めてしまったのだが。
一番嫌いだったのは中学のダンス。
うちの学校は何故か体育祭で組別にダンスを披露することになっていた。
踊れない者にとっては阿鼻叫喚、地獄のイベントである。
本番に向け練習する時間は設けられていたが、それでは足りず、私だけ実行委員でも無いのに放課後強制居残りを命じられた時はこの世の理不尽を呪った。
グループに分かれ、流行りの曲のダンスを授業中やる時も、ついていけな過ぎて私一人のために振り付けが変更になる始末。
いたたまれないことこの上ない。
そもそも手と足を同時に違う動きをさせたり、首や腰を少しひねるといった細かい動きが苦手なのだ。
元々どんくさい私にとっては曲のテンポも大体早いし。大体遅れる。
でも別に、全くやる気が無いわけではなく、足を引っ張らないように家で練習したり、親切な友達に教えを乞うたり…授業態度は至って真面目だ。
また、創作ダンス。与えられたテーマの振り付けを班で考えなければならなかった時。授業中、誰も手を挙げないので、私は家で振り付けを考えてきて提案をした。
すると、それがあまりにもダサ過ぎて(自覚はあった)満場一致の没を食らう。
そうして、ようやく班員のダンス経験者が動き出し、振り付けが決定するという事もあった。
もっと早くに動き出してくれ!無駄に恥をかいてしまったではないか。
そういった体育の授業も大学になると「ゆるく運動する」「上手い下手を問わない」選択制のものになり、かなり気楽になっていった。
そこで興味本位で取ったダンスの授業。その先生が強く印象に残っている。
「あなた、文章を書いているでしょう」
先生は私の作品を見たこともなかったが、授業中の即興ダンスを見てそれが分かったという。
「そんなすぐ見てわかるなんてすごいですね!」
私が目を丸くして言うと
「すぐじゃありません、あなたの動きをじっくり見て分かったんです。」
ピシャリと返されてしまった。すいません。
ダンスに関しては苦い思い出も多い私だが、この時ばかりは「ダンスって凄いんだな」と思ったのであった。